Our View of Sustainability at F&LC

F&LCの考えるサステナビリティ


日本発ビジネスの魅力

世界に通用する「スシロー」

 

私が株式会社FOOD & LIFE COMPANIES(以下、F&LC)の専務執行役員に就任したのは、2023年のことです。入社を決めた理由のひとつとして、改めて私自身が顧客として「スシロー」に行った際、美味しさや楽しさに感動し、さらにこの顧客体験を生み出す会社の理念に強く共感したことがあります。この時、店内のあらゆるご家族やグループの方々が、店の持つ雰囲気、メニュー、そしてレーンで運ばれるすしに目を輝かせながら笑顔でお食事を楽しんでおり、その様子が印象的でした。こんな場所はない、価格も気軽に楽しむことができる、純粋に良い場所だなと思いました。

こうした美味しさと笑顔が生まれる場所やここで過ごす時間は、「スシロー」の使命である「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」を体現するものでした。すしという日本の文化を守りながらも、新しい顧客体験を創出でき、お客さまの笑顔に直接貢献できる、ということに強く意義を感じました。

グローバルでのビジネスの拡大の可能性もあります。前職で、私はヨーロッパやアジアに8年ほど駐在し、日本の自動車や家電、消費財などさまざまな産業のマーケティング活動に携わりました。その顔ぶれは20数年の間、大きく変わらないどころか撤退したものもあり、新たに海外に進出した産業は限られていたと思います。1年半ほど大学院に在学したアメリカでも、世界における日本の存在感の変化を痛感していました。

世界に打って出られる日本の次の産業は何か。日本のすしの美味しさを手頃な価格でお届けでき、さらに、テクノロジーも加わり、多くの人が楽しめるフォーマットを持つ「スシロー」のビジネスモデルであれば、世界でも大きなチャンスがあると強く感じました。まさに、当社グループのVISION「変えよう、毎日の美味しさを。広めよう、世界に喜びを。」と「スシロー」の使命、そして私がキャリアを通じて追求してきた「日本のブランドを世界に広げる」ということが本質的に合致したのです。

私たちが実現すること

国内外一体でブランド価値の源泉を創り、磨く

 

仕事に取り組む上で大切にしているのは、プロフェッショナルとして個々人の能力を磨き、誠実な判断をすること、そして、周囲の人への敬意を忘れないことです。私たちの仕事はチームプレーです。必ず人とのコミュニケーションがあり、その上でお客さまにサービスを提供します。このことを強く意識したのは、前職で香港の事業の立て直しや台湾で経営を担っていたときのことでした。現地では、自身が培ってきたマーケティングのノウハウを活用できても、ローカルでの知見やスタッフの協力がなければ何も実現できません。敬意を持ってスタッフの皆さんに接し、そして一緒に小さな成功体験を重ねるうちに、みんなの目が変わり、仕事が楽しくなっていく様子をこれまで何度も見てきました。重要なのは、現場にいるスタッフと同じ視点を忘れずに働くという基本です。その信条をもって当社グループに入社後、まずは自ら志願して、国内の「スシロー」や「京樽」「回転寿司みさき」「鮨 酒 肴 杉玉」といった主要ブランドの店舗で、立場を明かさずに働きました。2週間という期間でしたが、洗い場から握り、魚の皮引きといったキッチンでの業務や、ホールでの接客まですべてが学びの時間でした。これらの仕事を通して、現場で働くスタッフの苦労や改善すべき課題に気づき、また同時にお客さまの笑顔を直接見られる喜びや意義を感じることができ、実りの多い経験となりました。

今後は代表取締役社長 CEOとして、中期経営計画を着実に進めていくと同時に、ブランド力の強化にも取り組みたいと考えています。そのためには、ブランド価値の源泉である商品調達、お客さまの体験価値を高める店舗運営、品質管理や衛生管理、コンプライアンスを重視した活動などをきっちり磨いた上で、お客さまにコミットすることが大切です。なぜなら、それらをお客さまが体感され、ご支持をいただいたときに初めてブランド価値となり、事業の成長につながると考えるからです。

海外事業拡大に伴い、さまざまな取り組みも海外事業と国内事業が連携していきます。組織行動指針として「One Company」を掲げ、海外と国内を分断して考えるのではなく、例えば、海外の役員が国内を、国内の役員が海外を兼務するなど、相乗効果を見込める組織体制に整えました。また、本社機能と事業会社とのシームレスな連携も進めます。商品調達は現在、F&LCの商品本部がグローバルにサービスを提供しており、今後一層強化してまいります。マーケティング機能においても、F&LCの本部主導でブランド全体のマネジメントを進め、ブランド価値の向上に努めます。一方、各国・地域におけるキャンペーンや販売促進は、文化や習慣を理解しているローカルのメンバーが現地での深い理解のもと実施する必要があると考えており、この両面でマーケティング活動を進めていく予定です。

サステナブルな水産資源調達に向けて

お取引先さまと共創し競争力を強化

 

FY24の業績は、国内、海外ともに好調に推移し、着実に大きな成長を遂げました。8月に中国大陸に出店した「スシロー」北京1号店が大盛況ですし、アメリカではボストンに4月に初進出した寿司居酒屋の「鮨 酒 肴 杉玉」(現地ブランド名:酒林)を通して、現在、市場のラーニングを進めています。

国内においても、大きな成果を出すことができました。カスタマージャーニーを細かく理解し、どの体験価値の向上を目指すのかを見極め、愚直に営業やマーケティング企画を練り上げました。メディアパフォーマンスも短期で改善しました。また大きなトピックは、デジタルビジョンと回転レーンを融合した「デジタル スシロービジョン」、通称「デジロー」です。2023年9月から3店舗で試験導入したところ、お客さまから評価され、FY24は19店舗まで拡大しました。「スシロー」の創業40周年キャンペーンも業績に大きく寄与しました。物価上昇の中でもお客さまに喜んでいただきたいという思いから一皿税込100円という還元型の商品を投入し、併せてコミュニケーション戦略も変更するなど効果的な施策を積極的に実施してきた1年でした。経営としては、円安や光熱費の高騰を含めさまざまな環境変化がありましたが、創業から続く「この美味しさでこの価格」を維持しています。

世界的な気候変動はビジネスに影響を与えています。今後、養殖魚の重要性はより高まっていくでしょう。お客さまに安定した品質で商品を提供し続けるために、サプライチェーンの上流の生産者など各企業の投資や、種苗・飼料の開発などのためのジョイントベンチャーを設立しています。また、次世代の技術開発のため、他企業への出資や共同研究も進めています。このような環境の中、2024年5月にお取引先さまにお集まりいただき、サステナブルミーティングを実施しました。サステナブルな循環型の水産資源調達モデルをお取引先さまと共創し、競争力を高めていきたいという当社グループの考えを共有し、ご理解いただくことを目的に開催したものです。こうした取り組みは当社グループの成長ドライバーの源泉となり、競争優位につながるものと考えています。

企業価値の拡大に挑む決意

人的資本の強化と、成長分野への選択と集中

 

今後、人的資本経営の重要性はさらに高まり、企業が成長を遂げる上で欠かせない要素となります。当社ではFY24より待遇の向上や、副店長・店長・課長・部長など階層別の研修を設計・実施するなど人への投資を始めました。また、海外事業のさらなる拡大のために、今期以降、採用、教育、育成、機会の提供のサイクルを海外も含めて改めて描き、人財づくりを進め、競争優位の源泉としていきます。そのために、事業部間のサイロ(縦割り)を取り払い、例えば、国内と海外の現場、時には本社を行き来して経験を積むなど、育成を図る取り組みを進めます。

中長期的に企業価値をさらに高めていくために、各事業において、各国・地域のROICを確認しつつ、売上収益、EBITDA、営業利益はもちろん、店舗ごとの経営状態についても細やかに見ていきます。例えば、地域別では中国大陸の中でも勝ち筋のエリアを見極め、そこに資本を集中的に投下していくなど、選択と集中を進めます。その観点でいえば、当社グループの主要4ブランドの中でもグローバルには「スシロー」にリソースを集中させていきたいと考えています。

ガバナンスに関しては、取締役会の役割は執行を管理し、監督するものとの位置づけから、社内取締役は2名とし、社外取締役を6名の体制にしています。社外取締役には、会社の成長をドライブする意思決定や議論のため、専門性や実績を含め多様性のある方々にご就任いただいております。

代表取締役社長 CEOに就任し、重責を担うことになりましたが、常にお客さまやステークホルダーの皆さまのことを考え、誠実に判断し、持続的な成長を実現していきます。

株式会社FOOD & LIFE COMPANIES

代表取締役社長 CEO