マテリアリティ食品ロス削減と海洋生物資源などの有効活用
調達基盤の確立で目指すサステナビリティ
世界中のお客さまに安全・安心な食を提供することを目指す中で、水産資源の持続可能性という社会課題は避けることはできないと考えています。資源の安定的な生産・活用のために、調達基盤の強化を推進し、川上から川下までサプライチェーン全体の最適化に取り組んでいます。
サステナブルな調達の実現に向けて
サプライチェーンの改革に取り組む
当社グループでは、食材の調達を「川上」、食材の加工・輸送を「川中」、お客さまとの接点である販売を「川下」と定義しています。多くの食材調達を必要とする事業であることから、限りある水産資源の安定確保に取り組むことが重要な課題の一つとなっています。
それにともない、川下事業だけでなく、養殖も含めた調達面における競争優位性の確立、また調達した資源についてはDX活用によって食品ロスやコストのカットを徹底するなど、川上〜川中での取り組みを強化しています。圧倒的な顧客基盤を持つ川下の強みを生かし、外部パートナーと連携しながら、サプライチェーン全体で水産資源の安定活用に取り組んでいきます。
川上事業での調達基盤づくり
川上事業の取り組み
気候変動等の将来の大きな環境変化が懸念される中、天然漁獲の生産量減少についても危惧されています。また、飼料コストの高騰も課題であり、天然漁に依存しない水産資源の調達の重要性が増しています。その対策として外部事業者や最先端技術への投資や業務提携により、種苗開発や飼料改良・代替などの新技術の開発に取り組んでいます。川上事業での調達基盤の強化によって、安定した品質と生産量の確保を目指します。
養殖比率50%に向けて専門事業者とのジョイントベンチャーを設立
当社グループの水産資源の調達比率は、2021年時点で天然が65%、養殖は35%です。さらなる水産資源の安定的な生産・ 活用を目指し、将来的には養殖比率50%を目標に掲げています。具体的な取り組みとして、養殖事業会社と株式会社マリンバースを設立しました。種苗や飼料等の供給を通じて養殖業の支援を推進しています。
技術革新と研究開発による次世代養殖への挑戦
養殖業における環境が大きく変化していく中で、次世代技術として注目されているゲノム編集や最先端のゲノム解析技術を有する 大学発スタートアップ企業への投資や、共同研究を行っています。 この事業を通じ、変化していく環境に対応した品種改良・種苗開発による生産性の向上を図ることで、サステナブルな養殖業の実現に取り組んでいます。
次世代飼料や養殖設備の開発
次世代飼料原料の研究開発や飼料成分のリサイクルを強化し、天然の魚粉原料依存からの脱却を目指すとともに、飼料の規格化を進めることを計画しています。コストや品質の維持・管理だけでなく、トレーサビリティなど原料に対する社会的責任を果たし、飼料原料の持続可能性の確保に努めます。また、養殖現場においては、人口減少や生産コストの高騰により、省力化・省人化を通した生産性の向上と生産コストの抑制が求められています。養殖設備メーカーと連携し、次世代の養殖設備の開発支援を通じて、サステナブルな水産資源の調達を目指しています。
TOPICS
安定供給を目指して養殖業者を支援
20年来の仕入れ先であり、ぶり、はまちの養殖に力を入れる尾鷲物産株式会社は 、当社が資本参加している 企業の一つです。当社と協業し、養殖魚の拡大と安定供給を目指しています。
スシロー専用米で生産者にも貢献
全農パールライス様の全面協力のもと 、シャリに適したスシローの専用米を作る 生産者と契約し、米の安定供給と品質向上に取り組んでいます。
DX活用による食品ロス削減
川中事業の取り組み
食品ロス削減は地球環境への貢献であると同時に、外食産業にとっては事業活動のサステナビリティを考える上でも必須の取り組みです。当社グループでは需要の予測から各お取引先さまとの連携・指示まで、DX活用によってサプライチェーンを横断的にコントロールし、食品ロスの削減に取り組んでいます。
DX推進により横断的な物流管理を目指す
無駄のない食材調達を実現するために、当社グループは需要予測AIシステムを構築しています。物流会社、生産・加工メーカーとのデータ連携によりサプライチェーンを横断的に管理し、統一IDでトランザクションデータを収集・蓄積することを目指しています。また、調達量の最適化とブランドを横断した共同輸送の実現も目指してまいります。
DX・AIを駆使した食品ロス削減
高品質で美味しい商品を、常に手ごろな価格でお届けし続けるため、廃棄する食材をできるだけ少なくすることが重要となります。スシローは2002年から店舗運営にITを取り入れ、食品ロスの削減に取り組んでいます。お客さまのニーズを数字でつかむことによって、ニーズが高い商品はしっかり仕入れて品切れを出さないようにする一方、廃棄される食材を減らしていこうという管理側のモチベーションも高まり、店舗で具体的な行動や対策を実施しやすくなっています。今後は予測精度をさらに高めるため、AIを活用した進化に取り組むほか、仕入れや在庫管理にも活用を広げ、食品ロスの一層の削減を推進していきます。
貴重な水産資源を余すことなく活用
一般的に、すしに使用できるのは魚の腹の部分など約4割と言われていますが、1匹丸ごと仕入れる当社グループは残りの部分も商品に活用しています。魚のアラや骨までに価値を見いだし、グループ内のブランドの垣根を越えて食材を使い切るスキームを構築しています。例えば、まぐろの握りに向いた部位は「スシロー」が利用し、お頭は「回転寿司みさき」で職人が煮つけにします。手作業でないと身が取り切れない中落ちは「杉玉」で酒の肴として提供する、といった例が挙げられます。
根幹にあるのは、すしとして扱う“背や腹”の部分とアラや骨などの美味しさの価値は同等という考え方です。私たちは、「魚に捨てる部分はない」という日本料理の考え方を創業以来受け継ぎ、スシローのメニューにあるラーメンでアラを活用するなど、握りにはできない部位を活用したメニュー開発を続けています。