食の大切さから、笑顔と感謝へ―― F&LCが「すし育」で伝えたいこと
F&LCが子どもたちを招いて田植え・稲刈り体験を始めたのは、2015年のことです。当初はPRの一環で、うまいすしの基となる米や魚に目を向けた「海と田んぼプロジェクト」の一企画でした。10年以上の歩みの中で、食の大切さを学び、自然の恵みや生産者の方々への感謝の心を育む活動へと広がり、今では田んぼでの体験に加えて、養殖場の見学や学校での出前授業も行っています。
F&LCはこうした活動を今年「すし育」と名づけ、「すしを通して感動と笑顔を次の世代もずっとつないでいく」という考えのもとで取り組み、発信にも力を入れはじめています。経営企画部サステナビリティ推進課の末永に、「すし育」で伝えたいこと、子どもたちのどんな姿を見てきたのかを聞きました。
プロフィール
経営企画部サステナビリティ推進課 末永翔真
スシローの店舗で副店長を務めたのち、社内公募制度で異動。現在は「すし育」の主担当として、すべての活動の運営を任されている。
※所属・役職は取材当時のものです。

―― 「すし育」では、どんな活動をしているのですか
大きく分けて、田んぼ、海、教室の3つの現場があります。田んぼは、滋賀、兵庫、千葉など、各地での田植えと稲刈り。海は主に三重県尾鷲市で、養殖場の見学などを行っています。教室は、小学生から高校生までを対象にした出前授業です。すしは、しゃりとネタからできています。そのお米や魚について、体験や授業を通じてお子さまたちに知ってもらう。「すし育」は、知るきっかけを作る活動です。
食の大切さに、体験の中で気づく
―― 食の大切さを知るきっかけを作るために、現場ではどんなことを大切にしているのでしょうか。
楽しんで参加していただくことです。かしこまって学ぶ場というより、「少しでも興味を持ってもらえたら」という温度感でやっています。お子さまたちは、田んぼで泥んこになりながら田植えを楽しんでいます。中には、途中でタニシ探しに夢中になるお子さまもいますが、それも田んぼならではの楽しみ方だと思っています。昨年、海の活動として山口県長門市で初めて行ったウニの殻むき体験でも、はじめは「むきたくない」というお子さまもいましたが、やりはじめると皆さん夢中になっていました。単なる勉強ではなく、楽しむことで興味は湧いてくるので、それが大事なことではないかと思っています。
―― 体験のあと、参加者からはどんな声が届きますか。
「子どもがお米を残さず食べるようになった」という声を保護者の方からいただきました。今年の田植えのあとにも、「家でも息子とお米の大切さを共有できている」といった声が届きました。食を大切にしようという思いを持ち帰っていただくことが、イベントの大きな目的です。家に帰ってからもその思いが残り、親子で共有できていると知ると、本当にうれしくなります。


ふだん食べているおすしの、はじまりに出会う
―― お米の話だけでも子どもたちの変化が伝わってきますね。魚にまつわる海の体験についても詳しく教えてください。
海の体験では、いつも食べているおすしのネタがどこから来ているのかを見ていただきます。例年は船で沖にあるハマチの養殖場へ向かい、いけすで育つ魚にお子さまたちが餌をあげます。生きて泳ぐ魚をあんなに間近で見る機会は、なかなかないと思います。港では水揚げされた魚に触れ、魚の加工や、その日のうちに店舗へ届けるための工程も見学します。泳いでいた魚が切り身になって、おすしとしてみんなのもとに届いている。そこを感じてほしいと思っています。
―― 田んぼや海の体験を通じて、お店で食べるおすしの原点に触れてもらっているのですね。
はい。体験の当日や翌日に早速スシローに行ったというお話も聞きますし、感想には「ふだん何気なく食べているおすしへの感じ方が変わった」と書いてくださったこともありました。体験での学びが、お店の一皿とつながっている。そうした声は、この仕事の励みになります。

お米や魚を育てる環境と、生産者に目を向ける
―― 体験で伝えたいことは、ほかにどんなことがありますか。
たとえば、魚は毎日世話をする人の手と、住みやすい海があるから育ちます。養殖場の方は、日々魚に餌をやり、大切に育てています。それでも、海の状態によっては、いつもどおりにはいかない年もあります。今年は一時的な赤潮の影響で、いけすでの餌やり体験ができなかったため別のプログラムを行いました。このように、海の状況は常に変わります。
自然と向き合いながら魚を育てている人がいる。私たちが口にする魚の命は、そうした人の手によって支えられています。昨年参加された保護者の方からは、「魚の命をいただきながら自分たちは生きていることを、魚一匹まるごとさばいているのを見て子どもたちも気づいてくれたと思います」という言葉をいただきました。魚一匹の裏側にある生産者の方々の苦労や工夫を知っていただくことも、体験を通じた学びの一つだと考えています。
―― 一方、出前授業は教室の中です。海や田んぼに行かない生徒たちへの授業は、どのような内容なのでしょうか。
学年や、そのときのテーマに合わせて授業をしています。昨年伺った大阪府内の中学校では「水産資源の現状を知り、未来の回転寿司をデザインしよう」というテーマで2コマの授業をしました。1コマ目は、水産資源をめぐる環境や人の問題が今どうなっているのかを知り、回転寿司ではどう取り組んでいるのかを学びます。2コマ目はもう少し視野を広げ、自分たちや社会、企業に何ができるかを自分ごととしてグループワークを通して考え、発表してもらいます。
ただ、限られた時間であれもこれもと詰め込んでも吸収しきれませんし、面白くもないですよね。だから説明しすぎず、少しでも興味を持ってもらうことを優先しています。そのうえで、自分で考えて言葉にする。その中学校では、生徒さんも「自分たちで考えたことを少しでも有言実行できるように取り組みたいと思った」 と話していたと聞いています。

店舗で培った経験が、すべてに生きている
―― 末永さんは「すし育」での多岐にわたる活動を企画・運営していますが、どのような経緯でこの仕事に携わるようになったのですか。
入社のとき、採用担当者から「本社は店舗の応援団」だと聞きました。前線に立つより、後ろから支えるほうが自分には向いているのかもしれない。そう感じて以前から本社を志望しており、公募制度があったので手を挙げました。異動の際は食育活動 “も” 担当すると聞いていましたが、今では主担当として、すべての活動の運営を任されています。 店舗では魚の切り付けとから接客まで、幅広い業務があります。それを高校生から80代の方まで、幅広い年代の方と一緒にこなしていく中で身につけた人との接し方は、イベントの運営にかなり生きていると感じます。
―― 本社で働いてみて、店舗で働く仲間への思いに変化はありましたか。
イベントでは、お子さまたちが「この前スシローに行ったよ!」と声をかけてくれたり、好きなネタを教えてくれたりします。出前授業で、私が一個人として前に立って話しても、正直、誰も聞いてくれないと思うんです。「スシロー(F&LC)の人が来た」と、お子さまたちが「スシロー」に親しみをもってくれているから、積極的に聞いてもらえる。それは、店舗の皆さんが日々頑張ってくれているおかげだと感じています。
これから先も、おいしいおすしを

―― 「すし育」活動のやりがいを教えてください。
体験イベントの最後に、最寄り駅で参加者の皆さまをお見送りします。お子さまとタッチしたり、ひと言交わしたり。朝9時の受付から16時ごろまでの一日がかりなので、中には疲れた顔のお子さまもいます。それでも、イベント中の楽しそうに目を輝かせている様子や、体験後にいただく「お米を大切に食べたい」「海や魚の命の大切さが分かった」といった声に触れると、伝えたいことがちゃんと伝わっているんだなと、やっていてよかったなと思えます。
―― 最後に、この活動を通じて伝えたいことを教えてください。
「すし育」は、まず食の大切さを知ってもらうことから始まると思っています。そのうえで、ふだん食べているものに興味を持ってもらいたいという思いがあります。おすしをこれから先もおいしく食べ続けていくには、お米や魚を育てる環境を未来までずっとつないでいくことが欠かせません。その先で、生産者の方々にも目を向けてもらえたらと思っています。
これからは活動そのものに加えて、そうしたきっかけを、もっと多くの方に届けたいと考えています。
